はじめに
現在付き合い始めて19年、結婚して13年になる夫は、結婚してまもなく仕事のストレスから次第にお酒に溺れるようになりました。
私は、そのことを誰にも相談できずたった一人で悩み苦しんでいた時期が長くありました。
夫婦共にボロボロになって心理学に出会い、夫婦関係を見直すことが問題解決へつながるということを知り、それから二人で夫婦関係の改善に取り組んできました。
夫はその後劇的な変化を遂げ、現在は夫婦二人でプロカウンセラーとして活動させていただいています。(夫のブログ >> 心理カウンセラー 森川陽介)
その一連の過程の中で、私が実際に体験したことが、私が考える、彼を理想のパートナーにするために必要な3つのステップであり、私のカウンセリングのコンセプトです。
ステップ1:自分の心に余裕をつくる
ステップ2:彼の心を理解する
ステップ3:彼に愛を注ぐ
少し長くなってしまいますが、最後までお付き合いいただけたらとても嬉しいです。
ステップ1:自分の心に余裕をつくる
付き合っているのかよくわからない彼。
問題行動を繰り返す彼。
私のことを本当に好きなのかわからない彼。
そんなパートナーと過ごしているとモヤモヤとした感情が少しずつ心の奥に溜まっていきますよね。
彼の言動一つ一つに心が振り回されて、ネガティブな感情に飲み込まれてしまったり、彼にそれをぶつけてしまいケンカになったり、自己嫌悪になってしまったり。
私も夫がお酒を飲みに出かけるたびに心がモヤモヤとしていました。
帰りが遅ければどこかで怪我をしているのかもしれないと心配したり、帰宅して彼が自己嫌悪の波に飲まれているのを見て悲しくなったり、それでもまたしばらくしたら飲みに出かけていく彼に腹を立てたりと色々なネガティブな感情を抱えていました。
けれど、当時の私は自分の状況や抱えている気持ちを誰にも話すことはありませんでした。
誰かに相談したところで返ってくる答えはたかが知れていると思っていましたし、自分の力で問題を解決できると、傲慢にも思っていました。
さらに、その頃の私は心を麻痺させて自分が苦しんでいることを全然自覚していなかったので、自分の心がSOSを発していることに気づいてすらいませんでした。
そうやって、なんとか夫のアルコールの問題を解決しようともがいていましたが、次第に行き詰まり、ボロボロになって夫婦二人で辿り着いたのが心理学の世界でした。
心理学を勉強し始めると、今まで誰にも話さなかった夫のアルコール問題をワークショップなどで話す機会が多くありました。
すると、「つらかったね」、「よく頑張ってきたね」、「そんな大変な旦那を支えていて偉い」といったような言葉をたくさんかけてもらいました。
私はその時に初めて、自分の気持ちを理解してもらい寄り添ってもらうことでどれだけ心が楽になるのかを知りました。そして、それは夫のことで自分がどれほど苦しんでいたのかを自覚できた体験でもありました。
人はしんどい時に心を麻痺させることによって問題に立ち向かおうとする時があります。
「つらいと言っても何も変わらない」、「助けてと言っても誰も助けてくれない」そう思ってしまう時には一人で全てを解決しようと歯を食いしばって、全てを抱え込んでしまうことがあるのです。
けれど、そんな状態が長く続けば次第に心はすり減り、問題解決に向けて動き出すエネルギーが失われていってしまいます。
そんな時、問題解決に向けた第一のステップは、まず自分の心に余裕を取り戻すことが何よりも大切です。
問題から少し離れて、一人でゆっくりと休む時間を取ること。
誰かに苦しい気持ちを聞いてもらうこと。
今までの頑張りを誰かに認めてもらうこと。
自分にご褒美をあげること。
自分に自信を取り戻していくこと。
自分の心と向き合い、自分の心の声を聞くこと。
そういう時間を取っていくことをおすすめします。
ステップ2:彼の心を理解する
自分の心に余裕を取り戻すことができたら次のステップでは彼の心に意識を向けていきましょう。
私の夫がお酒の問題でどん底にいるとき、彼は毎週のように同じサイクルを繰り返していました。
お酒を飲みに出かける → 帰ってきて自己嫌悪でひどく落ち込む → 数日かけて立ち直る → 元気になってまたお酒を飲みに出かける → 帰ってきて自己嫌悪でひどく落ち込む…
私はそんな彼の行動を理解できずにいました。
お酒を飲みに出かけるのはいいけど、どうしてそんなに自分を責めるのだろう?
なぜ、そんなに嫌な思いをするとわかっていてまた飲みに出かけるのだろう?
そう思っていました。
初めの頃は自己嫌悪で落ち込む彼を慰めようとしていましたが、次第に何度も同じサイクルを繰り返す夫に「もう勝手にすればいい」と呆れ果てている自分もいました。
心理学を学び始めて私がとても驚いたことは、私たちの心の中には、自分でも認識できていない大きな領域があるということでした。
自分では相手に怒っていると思っていても、心の奥では悲しみを感じていたり、さらにその奥では実は自分を責めていたり。
私たちの心はそのようなミルフィーユのような層になっていて、心の表面で感じていることと、心の層を一段ずつ降りていって感じていることが全く違うということがよくあります。
私はずっと夫の言動が理解できずにいましたが、その考え方に触れたとき、彼の心の中には私も、彼ですら知らないもう一人の彼がいるのかもしれないと思えるようになりました。
彼はお酒を飲みたくて飲んでいるのではなくて、飲まずにはいられない苦しみがあるのかもしれない。
そんな彼の心の奥の苦しみに目を向けられるようになったとき、私の中にあった彼を理解できない苦しみも薄れていくような感覚がしました。
それから時間をかけて私たち夫婦は彼の心の奥にどんな思いが隠れているのだろうかということについてよく話をするようになりました。
彼の心の奥には寂しさや、自信のなさ、完璧主義があり、私を幸せにできているのだろうかという不安がありました。
そんな想いを彼はたった一人で抱えていたのです。
そのことに気づいたとき、彼が自分の中の不安と闘いながらどれだけ私のことを想ってくれていたのかを知り涙が出ました。
そして、夫もまた、自分の心を理解してもらえたことに涙を流していました。
私たち夫婦は表面的には仲が良く、うまくいっていると思っていたけれど、心の奥では自分ですら知らない感情を隠し持っていて、繋がれていない部分がたくさんあったのでした。
私たちが心理学の世界にたどり着いたとき、多くの先輩カウンセラーから問題解決の鍵は「夫婦関係の改善だよ」と教えられていた答えがそこにありました。
私たちがお互いに一人で抱えていたそんな想いを、夫婦で分かち合い、書き換えていく必要があったのです。
どんなに理解できない彼の行動であっても、「もしそこに彼も知らない理由があるとしたら?」と考えてみることが問題解決の糸口になるかもしれません。
ステップ3:彼に愛を注ぐ
自分の心に余裕を取り戻し、彼の気持ちを理解できたら、いよいよ3つめのステップにチャレンジしていきましょう。
彼に愛を注ぐ方法は、あまり難しく考える必要はありません。
できることからやってみるということが一番大切です。
どうすればいいかわからない時は、相手に感謝を伝えたり、褒めてあげるということから始めるのがおすすめです。
私が初めてワークショップに参加した時にカウンセラーさんから出された宿題は、小さなメモでもいいから夫に感謝の言葉を伝えたり彼の良いところを伝えましょうというものでした。
そんなこと?と思うかもしれませんが、実際はとても効果が高いのでおすすめです。
そんな宿題を出されるくらいなので、当時の私は本当に彼を褒めるということが苦手でした。
最初は彼を褒めるとか、好きなところを伝えると言ってもすごくぎこちなくて、棒読みのような、心があまりこもっていないような伝え方だったと思います(笑)
それでも、夫はそんな私の言葉をとても喜んでくれました。
私は、それまで自分の言葉や存在が彼にとってこんなに価値があるものだということを知りませんでした。
「私なんか…」と自分の価値を低く見積もってしまうことで、私が彼に与えられるものはちっぽけなものしかないと思い込んでいました。
けれど、メモを渡すという私からの小さな愛ですら喜ぶ彼の姿を見た時、それを見て自分も嬉しくなり、自分の価値にも気づくことができたのです。
あなたにとって彼が価値あるもののように、彼にとってもあなたは価値があるということに自信を持ちましょう。
そして、彼を愛することを犠牲や義務ではなく、自分自身にとっても嬉しく、気分のいいものだと捉えられるようになることが一つのゴールです。
時には、彼に愛を注ごうと思うとこんな思いが出てくる時もあるかもしれません。
「なんで私ばっかり彼を愛さないといけないの?」
「私ばっかりしんどい思いをしている」
「私だって愛されたい」
「彼を愛しても何も返ってこないから無駄な気がする」
そんな気持ちが出てきても全然OKです。自分を責める必要はありません。
それは、あなたの心が助けを求めているサインです。
そんな時は、ステップ1に戻ってもう一度心に余裕を取り戻す時間をとってあげてください。
そして、どうしたら自分にとっても幸せで嬉しい気持ちで彼を愛することができるようになるのかを一緒に探していきましょう。
最後に
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
こちらでお伝えした3つのステップは私の体験した経験をもとにしたお話であり、必ずこのステップを踏まなければいけないということではありませんし、彼を愛し続けることだけが正しい訳ではありません。
誰を愛したいかはあなたが決めていいということを忘れないでください。
また、各ステップは一度だけではなく、何度も何度も行き来をしながら進んでいきます。
今回こちらで書いた流れは私の体験をぎゅぎゅっと凝縮したものなので、時に停滞したり、横道にそれていくこともあるかと思います。
けれど、大きな流れの中では、「自分の心に余裕をつくり、彼の心を理解して、愛を注ぐ」というステップは変わりません。
私も何度もこのステップを繰り返してここまで歩いてきましたし、これからもこの旅は続いていきます。
ですから、ステップを戻ることは何も悪いことではありません。
最高のパートナーシップを築きあげていくことはとても時間と手間のかかることです。
けれど、私は人生をかけて積み上げていく価値がそこにはあると思っています。
もし、あなたも同じようにそんな道を歩いていきたいと思うならば、ぜひ一緒に歩いていきましょう。
そのお手伝いをさせていただけたら嬉しいです。